私の父がまっすぐの姿勢で歩けなくなって1年くらいになります。腰痛がひどく、布団から起きてこられない日もあるほど重症でした。
高齢なので老化と割り切れば良いのでしょうが、痛い痛いという声を毎日聞いて、家に籠ってぐずぐずしている父の態度は、他の家族の健康にも悪影響を及ぼします。
少しでも楽になるといいなと思い、いくつかの接骨院や治療院を回りました。いろいろな本や記事も読み勉強しました。現在は、効果はあったような、ないような、はっきりしない感じが続いています。うんと痛い日もあれば、調子のいい日もあります。完治するのは無理でも、痛みと上手につき合って老後を少しでも和やかに暮らしてもらいたいと祈る昨今です。
話は変わりますが、先週衣替えをしました。わたしは、着古したTシャツを捨てずに分解して、大掃除のときの雑巾として使うことにしています。
今年の夏大活躍したグレイのTシャツを雑巾にしようと、いったんハサミを持ったのですが、手が止まりました。襟はすり切れ、脇には穴が空き、普通に着用するには、みすぼらしいTシャツですが、手触りはふわふわすべすべでとても心地良いのです。捨てるのが惜しいな、と考えました。
はっと思いついて、雑巾の形に切るところを縦に長細く、帯状の布を4枚切り出しました。
アイロンとミシンを出して、帯状に裂いたTシャツ地をネクタイのような形に縫い合わせました。
寒がりの父親の首に巻く、襟巻きを作ったのです。試作の段階で父の首に巻いてもらうと、ぴったりのサイズでした。少し寂しいので、端の部分に刺繍をしてみようと思いました。古い刺繍糸を引っ張りだして、思いつきの模様を入れてみました。図案は出たとこ勝負、下絵も練習もなしのぶっつけ本番です。占いコーナーでお客様をお待ちしている間、思いのままに針を進めました。
土曜日の閉店時には、柔らかでふわふわ、すべすべの手触りのオリジナル襟巻きが刺繍入りで完成しました。
翌朝、ゆっくり起きてきた父にしてもらうと「暖かい」という感想でした。巻いたまま食卓に座っていたので、気に入ってもらえたのだなと分かりました。
手作り襟巻きを一日首に巻いて過ごした夜、父から「今日は腰の痛みがまったくなかった」という発言が。
また痛い日も来るのでしょうが、つかの間でもずっと父を苦しめていた腰の痛みが一瞬でも消え去ったということは、我が家にとっては画期的な出来事です。
腰痛は気の病でもある、という説を本で知りました。毎日毎日「痛い」「それほど痛くない」「どこどこが痺れる」等々の愚痴を毎日聞かされているので、気分と痛みには関係があることも察していましたが、不安や悲しみが痛みとつながっているのだという確信を得た一コマです。
うれしい体験や夢中になること、晴れやかな気持ちになることが、慢性の腰痛を忘れる一番の薬だというのは本当かもしれません。
腰痛に苦しまれている方、もしくはそういうご家族がおられるかたのご参考になれば幸いです。
南田